サウナ

スーパー銭湯に行くとサウナには必ず入る遙生です。

楽に汗かきたいので。

汗かいたら健康にいいと思っているので。

休みの日にヒマだったりするとスーパー銭湯にいってサウナ入るんですけどね。

男湯のサウナって戦場ですから。

まず普通の風呂に軽く数分くらい浸かってから、いざ!って感じでサウナに入るわけですよ。

重いドアを開けるとまるで侵入を拒むかのように熱風が遙生の身体を包む。

更には入った瞬間に先客達がじろっと睨んできます。

もちろん遙生も負けずと中の先客達を見回します。

フンッ、大したことなさそうだな。

そう思いながら入ります。

そして・・男達の文字通り暑き闘いが始まります。

先に入ってた奴らより先に出てはいけない!!

自分ルール。

大抵はみんな同じ感じのルールを持っている。

素人はね、なるべくドアの近くに座るんですよ。

他の客の出入りの際の冷たい風で生き延びる姑息な手を使うわけ。

遙生は空いていた奥の席へ座る。

無言の中で汗が垂れる音と熱風の音だけが男達を包む。

一人、二人と出ていくたびに元気そうなじじいがニヤリと笑う。

しかし、そのじじいも限界を感じて出ていく。

残っている中の誰かがニヤリと心で笑う。

遙生のあごの先端から汗がポタポタと流れ始めるが、順調だ・・と、ニヤリと心の中で笑う。

遙生より後に入ってきた若い奴が

「あっちー」

と言いながら出ていく。

遙生は心の中でガッツポーズをとった。

そんな無駄な戦いをしていると、遙生と同年代くらいの男が入ってきた。

むかつくことにその男はタオルで前を隠していない。

その隠さぬおち○こさんは、男が歩を進める度にぶらんぶらんと左右に踊っていた。

立派・・ご立派ですよ。

そんだけ立派なら隠しませんよね。

闘争心に火がついた。

この時、サウナの中には遙生、若い男が2人、デカチン野郎の4人。

「デカチンには絶対負けねえ!」

デカチン以外の3人はそう思ったはずだ。

闘争心を丸出しにしようとしたところ、

デカチンは、

「あっついなー、暑すぎるだろ」

と、首をぐるりと回しながら独り言を言った。

入った直後から「暑い」と白旗をあげた発言に、デカチンをド素人だと判断し敵対心が薄くなった。

そして腰を下ろして座るとき、自慢のおち○こさんをタオルで隠していたことで更に敵対心はなくなった。

敵対心も失せたことだし安心してそろそろ出るか・・・

そう思った時に、デカチンは

「君、何かスポーツしてんの?」

と、若い男の一人に声をかけると同時に立ち上がった。

え!?

と、思っているとデカチンはその若い男の横に移動して座った。

やばい!

やばい!

やばい!

・・暑いサウナの中でデカチン以外の3人は急に冷や汗をかいた。

「ももは俺のほうが太いかな」

デカチンは若い男の足の横に自分の足を近づける。

その瞬間、全員が確信を持った。

おっぱいに興味がない男だ。

どっちかっていうと棒好きな男だ。

男だけど男が好きな人だ。

遙生は何かこのタイミングで出ることが怖くなり、下を向いて汗をダラダラかいていた。

「俺、ジム行って鍛えてんだけど君は?」

デカチンは若い男の身体を上から下まで舐め回すように見ている。

「・・・サ、サッカーやって・・ます」

若い男が困惑してパニクっているのがよくわかった。

「いい身体してるじゃん、ちょっと腹筋も見せてよ」

デカチンは若い男のタオルに手をかけようとした。

若い男は苦笑いをしながら

「い、いや・・」

と、その場を濁して席を立って出ていった。

それと同時にもう一人の若い男も立ち上がり出ていってしまった。

遙生は一番奥の席で出るタイミングを完全に失ってしまった。

サウナの中には遙生とデカチンの棒好き。

・・やばい・・く、くるのか・・・

遙生は汗を大量にかきながら様々な断わり方法を10通りくらい考えていた。

デカチンは遙生の方をチラッと見た。

遙生は視線を外していたけど確実にわかった。

間違いない。

遙生はサウナに集中するフリをしながら表情を消していた。

デカチンは遙生から目を逸らした。

そして

「あーあ」

と、言いながらゆっくり立ち上がってサウナを出ていった。

サウナの中には遙生が一人。

遙生の勝ちだ!

完全勝利だ!!

さてと・・勝利に酔いしれながら遙生もサウナを出ることにするか・・

・・・

・・・・

・・・・・

デカチンに声を掛けられなかった。

声を掛けられたくなかった。

でも、複雑な敗北感で目から汗が出そうだった。