バレンタイン

高校時代の思い出。

遙生は基本チャリ通、雨の日は電車通学だったんだけど、

2月になったら電車を利用する日を増やしていました。

通学時にチョコ貰えるかもしれない!って淡い期待をしていたからです。

髪を丁寧にセットし、ネクタイを下げて、ちょっと不良アピール。

普段はイヤホンで音楽聞いてるのに、話掛けられてもいいように音楽はなしだったり。

 

もう脳内では女子共の

「ねえ、あの人かっこよくない?」

「やだ!ちょっと悪そうだけどクールな感じ?」

「あたし、なんかキュンてきちゃった・・・これが恋?」

「あたし、膝に力が入らなくて立ってられなくなっちゃった・・・これが第二次成長期?」

そんな会話が聞こえてきました。

うん。幻聴だけど。

 

そして、バレンタイン当日には

「Aちゃんいきなよ!」

「やだ!押さないでよ!まだ心の準備が!やん」

「あ、あの!良かったらこれ受けとってください!」

遙生「え?あ、ありがとう。嬉しいよ。」 爽やか、かつクールな笑顔で受け取る。

・・・ここまで脳内トレーニングして、

当日前夜は「ありがとう」って言う時の笑顔の練習を深夜にまで行ったものです。

 

まあ、結果としては、

遙生の魅力は女子高生には早過ぎたんだな・・と、涙目で電車を降りて終わりました。

 

ションボリと学校に着くと下駄箱でガチのイケメンSが

S「遙生おはよー」

と爽やかに話しかけてきます。

遙生「Sはチョコもらったー?」

と聞くと

S「彼女から貰うことになってる」

と余裕で言うので、

俺からもバレンタイン(ハート)って気持ちで、噛んでいたガムをSのカバンにくっつけておきました。

 

そしてSが下駄箱を空けると、そこには可愛くラッピングされた小さな箱が・・

遙生「S!お前モテすぎじゃね?誰からだよ?」

Sは彼女がいるせいだったのか神妙な顔になり・・・

 

聞いたらどうもSの部活の後輩かららしく、ガチの想いが綴られたお手紙付きでした。

遙生「まぁ一応、ちゃんと返事はしとけよ。スゲー勇気出したんだろうからさ。」

S「だなあ…」

と、気まずい空気のまま教室に向かった思い出。

 

そう、Sは男の園、ラグビー部だったのです。