ウォシュレット

昔の話。

職場のトイレにウォシュレットが装備されたことで、

それまで使ったことの無かったウオシュレットを恐る恐る使ってみた。

「うむ・・悪くないな・・」

(ヤダッ・・ちょっと気持ちいいかも・・)

なんて、予想外に気に入ってしまい、その後も普通に使うようになった。

 

いつものようにう〇こをして、

いつものように「おしり」ボタンを押す。

パワーは”強”だ!

この瞬間だけはサラリーマンという日々の戦場から解放されて洗浄される。

「お、お、おっ」

綺麗になっていくお尻を感じる。

そしてトイレットペーパーで拭いて、

「だいじょうぶよ、遙生。あなたは汚れてなんかいない」

そう確認する日々を過ごしていた。

 

そんなある日、

あれ?

停止ボタンを押しても止まらない水流。

なんでだ?

連打するが何も変わらずにお尻が洗い続けられる。

 

何かセンサーでも付いているのだろうか。

「マダ アナタノ アナルハ ヨゴレテ イマス」

そう言われてるのだろうか・・・。

しかし、そんなはずはない!

遙生のあなるは処女だし、もう散々洗っているのだから。

 

文明機械の暴走なのだろうか・・・。

「ワレワレハ オシリダケデナク ヨゴレタ ココロモ アラウ」

「なんだって!?お前にそんなプログラムは組み込まれていないはずだ!」

「ヨゴレタ ココロ アラウ」

「や、やめろおおぉぉぉ!!!」

こんなチープなSF物語すら頭に浮かんできた。

 

そして、他のボタンも効かないことに気付いた。

ん?ひょっとしてリモコンの電池切れ?

そんな原因がわかってもどうしようもなかった。

遙生は洗われ続けながら思った。

このまま洗われ続けるしかないの・・か・・?

 

”1週間ウォシュレットにお尻を洗われ続けた男性を救出”

週刊文春のネタになったらどうしよう・・

こんな最悪の事態も頭をよぎった。

 

 

そして・・・

じゃあ、一気にフタしめればいいか(適当)

そう決断した。

 

いいか?タイミングは一瞬だ!

絶対にしくじるんじゃないぞ!

(ゴクリ)

3・・2・・1・・GO!

 

遙生はサッと便座から立ち離れ勢いよくフタを閉めた。

 

カタカタカタ・・と虚しく水がフタを洗っている音が聞こえる。

被害は最小限に食い止めることが出来た。

お尻から足が少し濡れた程度だった。

 

・・・勝った!ワレワレの勝利だ!!!

勝利に酔いしれた。

 

だがしかし、手に持っていたトイレットペーパーの存在に気付いた。

そうか・・まだ拭いていなかったんだったな・・。

しっかりと濡れたお尻を拭き、残留物がないことを確認する。

あれだけ洗われたんだし、当たり前だよな。

そう思いつつフタを少し開けてトイレットペーパーを捨てた。

 

まだ洗い続けてやがる、馬鹿め。

しょせんは機械・・人間様に刃向うんじゃねぇよ!

そう思いながら水を流し、鼻歌混じりでトイレを出る。

 

ちゃんと管理部署に報告しとかないとな。

そう思っていると後ろから同僚の女性社員から声を掛けられた。

 

「遙生くん、背中どうしたの?」

「何か引っかけられたみたいにビショビショだよ?」